路線廃止が届け出制となった鉄道事業法の改正や、旧国鉄路線を引き継いだ第3セクター鉄道の、転換交付金などをもとにした基金の残高が減少してきたことなどが影響し、前途が心配される地方鉄道が多くなってきています。

 ここでは、いくつか気になる路線の動向をまとめました。(最近の情報を赤字で盛り込んでいます

事業者/路線名 区間
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北海道ちほく高原鉄道 ふるさと銀河線 池田〜北見 140.0km
 早くから不安視されてきた、国鉄から転換したなかでは最長の3セク鉄道である。経営安定化基金が底をつく2006年度以降、赤字補填のための沿線自治体の負担が巨額にのぼることから、最大株主である北海道は、2003年11月に開いた協議会で、鉄道を廃止してバス転換するのが妥当との方針を正式提案した。そして2004年2月、財政支援の打ち切りを決定し、紆余曲折の末、少なくとも2005年度末まで鉄道を存続させ、その間に経営改善の見通しが立たなければ2006年4月にも廃止・バス転換を図ることで合意に至った。
→2005年3月の取締役会で、2006年4月の廃止を決定した。これで、1910年に国鉄網走本線として開業した線路が、正式に消えることになった。
北海道旅客鉄道(JR北海道) 江差線 五稜郭〜江差 79.9km
 北海道新幹線の2005年度着工が決まった一方で、並行在来線の当線は、JR北海道から経営分離される。当線のなかでも、本州と北海道を結ぶ貨物列車の走る五稜郭〜木古内間は、第3セクター化などで線路は存続される可能性が高いが、木古内〜江差間はすでに一日の平均利用者数が100名を割っている状態で、廃線は免れない見通しである。北海道新幹線の開業4〜5年前に周辺住民の流動調査を行い、線路の存廃が最終決定される見込み。
東日本旅客鉄道(JR東日本) 岩泉線 茂市〜岩泉 38.4km
 わずか1日3往復(ほかに区間運転一往復)、輸送密度が100を切るという超閑散線区で、別名「最後の国鉄ローカル線」ともいわれる。国鉄再建法の荒波を乗り切る主因となった、並行道路の未整備状態は、未だ変わっていない。しかし、あまりの乗客の少なさに、1996年、JR東日本盛岡支社がバス路線に転換する方針を持ち掛けたが、地元が強く反発し、今は存廃問題は一見沈静化している状態だが、いつ再燃してもおかしくないともいえる。
秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線 鷹巣〜角館 94.2km
 国鉄阿仁合線と角館線を、両線の未通部分を開通させたうえで引き継いだ第三セクター鉄道であるが、今年度の輸送人員は全線開通した1989年度に比べ、およそ半分にまで落ち込んでおり、ここ数年の単年度赤字も3億円近くに上っている。そのため昨年11月、秋田県知事は2004年度中にバス転換を含めて一定の方向付けをしたいとして、廃止を含めて検討する方針を表明。赤字を折半して補填している秋田県と沿線8市町村を中心として、懇話会が設置され、列車と同じような間隔・本数でバスを運行した場合、赤字が約1億6千万円削減されることが報告された。引き続き、2004年9月には利用者や沿線住民ら約三千人を対象に、バス転換の是非などを問うアンケートを実施されるなど、事態は切迫しつつある。
くりはら田園鉄道 くりはら田園鉄道線 石越〜細倉マインパーク前 25.7km
 当HPのコラム7581でも触れてきたように、宮城県が赤字補填のための補助金支給を2001年度から3年間を限度にすることを決めたのを受け、沿線5町は昨年4月に運賃を半額にするなどの需要喚起を狙った交通実験を実施。しかし結果は芳しくなく、その後同県は補助金を2004/5年度は半額支給、6年度はさらに削減して支給することを決定した。これらの結果、2007年3月末限りで廃止される。代替交通機関については、栗原郡10町村の合併で誕生した栗原市にとっての重要案件となるが、バスによる代替輸送となる模様。
わたらせ渓谷鐵道 わたらせ渓谷線 桐生〜間藤 44.1km
 乗客数は1994年度の年間106万人をピークに、2002年度は約73万人にまで落ち込んでいる。そのため、1989年の第三セクターへの転換時に、国が交付した鉄道経営対策事業基金の第一基金7億円も、赤字補てんにより減りつづけ、2004年度に枯渇した。群馬・栃木両県と沿線5市町村で構成する「わたらせ渓谷鉄道再生等検討協議会」は、2005年度から3年間を「経営再建期間」とし、同社に期間中の営業収支を均衡させる改善計画を求める一方で、2005年度の赤字(1億2000万円の見込み)は両県と5市町村で負担することになった。これは、2004年度末で4億9000万円を残す第二基金をこのまま取り崩すと、万一鉄道事業を撤退する場合などのための費用がなくなるからで、2007年度までに目標が達成できない場合は、全線バス転換を図るとしている。同社は年間一億円の経費削減を柱とする経営改善計画を提出している。
→2005年3月、全線を自由に乗り降りできる年間フリーパスを導入する方針を決めた。パスの価格は1万円で、10月実施を目指す。ただ、定期券客が割安なパスに移行するのは確実と見られ、それ以上に新規利用者が増えて、全体として増収になるのかどうか、疑問の声も多い。
日立電鉄 日立電鉄線<廃止> 大甕〜常北太田 11.5km
 1988年から赤字路線となり、経営努力を続けてきたが、バスや不動産事業を含めたグループ全体でも債務超過に陥った。そのため、会社は設備老朽化で安全運転が困難になるとして、2004年3月、鉄道廃止届を国土交通大臣に提出、2005年3月31日限りで廃止することになった。これに対し地元の常陸太田市は、日立電鉄に代わる鉄道事業者を募集したが、問い合わせがあったのは岡山電気軌道一社のみであった。同社からは受託運行方式での申し入れがあったのだが、合意に至らず、結局運行存続に必要な公的負担額が大きいことから、存続を断念した。
→2005年3月31日限りで廃止され、現在は鉄道施設などの切り売りがなされている。
→6月、地元の高校生たちが、鉄道の復活を求める団体を結成、佐竹高校のホームページ上で鉄道を運行する協力事業者の募集を始めた。これは、南海貴志川線が廃線を免れた事例が刺激になっている。
鹿島鉄道 鹿島鉄道線 石岡〜鉾田 27.2km
 航空自衛隊百里基地へのジェット燃料輸送が安定収入源であったのだが、パイプラインの老朽化を理由に2001年8月に休止された。これを受け、会社は公的支援がなければ廃止もやむなしとしたため、存廃問題が浮上。この時には沿線自治体と茨城県により、2002年度より5年間の公的支援と、親会社の関東鉄道による5年間の支援が決まったため、現在は一息ついている。2007年3月末が近づくと、存廃問題が再浮上することとなる。
→2005年、関東鉄道による、2007年以降の支援打ち切りが濃厚となった。これは、つくばエキスプレスの開業により、関東鉄道自体の大幅減益が見込まれるためで、同鉄道常総線の利用客が3分の2に減る見込みだという。
銚子電気鉄道 銚子電気鉄道線 銚子〜外川 6.4km
 ぬれ煎餅を発売するなど、経営努力で知られている電鉄である。しかし、経営安定化を目的として交付されてきた補助金が2005年で打ちきられることになり、今後の安全性向上を目的とした工事や老巧化車両更新のための資金調達が困難となっている。地元では署名運動を通じて存続を訴えている。
上田交通 別所線 上田〜別所温泉 11.6km
 「丸窓電車」が親しまれたが、同電車の引退後は乗客減による危機が伝えられることが多かった。昨年度の経常損失は約3400万円で、不動産部門の収益により、会社全体では一息ついている状態。しかし、国土交通省が打ち出した地方鉄道安全強化の新基準を満たすためには、今後10年間で約15億円の投資が必要と見込まれるため、会社側は地元自治体による公的支援がなければ廃止を検討せざるを得ないとしている。私自身2003年9月に利用した。長野新幹線建設による改築に伴い、起点の上田駅は高架化されて近代的になり、車両も冷房付のすっきりとした東急の中古車であった。途中までは都市近郊の風情で沿線人口も少なくないが、駅間距離が短いからか、速度はあまりあがらず、利用者も心なしか少ない印象であった。ただ、翌月には列車増発が行われている。
→上田市は、2004年12月の定例市議会で上田交通と「別所線の運行に関する協定」を締結。同線の安全対策費として既存の補助率を引き上げる内容で、今後3年間に緊急的な安全対策のために2億6800万円を補助、老巧化したレールなどの交換を行う。
→上田交通は、100%出資の子会社「上田電鉄株式会社」を10月に発足させ、別所線の鉄道事業を分離して新会社に移行することを決めた。余談だが、「上田電鉄」という会社名は、昭和18年の戦時統合によって、上田電鉄が丸子鉄道と合併して消えて以来、久々の復活である。
のと鉄道 能登線<廃止> 穴水〜蛸島 61.0km
 2001年3月末限りで3セク路線初の廃止区間(穴水〜輪島間)を出しのに続き、2003年末に、石川県のと鉄道経営問題検討委員会は、能登線をバス転換すべきとの会長私案をおおむね了承した。能登半島の鉄道は、昭和57年に全線開通した能登有料道路により、自家用車やバスに乗客を奪われ続けている。そのため、まだ輪島への鉄路が残っていた時に訪れた際にも、全般的にあきらめムードが強い印象を受けて、早晩こうなってしまうのではと危惧していたが・・・。また、輪島への線路が残っていた時に訪れた能登三井駅では、腕木式を廃してせっかく自動化した信号が、完成直後に列車交換廃止のために使われなくなったり、昨年度の能登線での列車削減も、経営コンサルタントの言いなりであるなど、どうも私のような素人から見ると、経営に主体性がない印象を受けていたが・・・結局2004年3月23日の取締役会で2005年3月31日限りで廃止することを決定、国土交通省に廃止届を提出した。
→2005年3月31日限りで穴水〜蛸島間が廃止された。これで同社にとって、転換当時の110kmを越えていた路線長が、七尾〜穴水間のみのわずか33.1kmにまで縮小したことになる。あまりの路線縮小のせいか、ホームページの更新もできていない状況であるが、この能登線の廃止に伴い、穴水駅に車両整備用の施設を新設したり、老巧車両の更新のために、補助金以外に4億円程度の資金が必要になるという。すでに赤字補填のための運営助成基金は底をついており、公的支援がないと今期末の累損は5億を越える見通しで、10億円の経営安定基金の取り崩しにより、債務超過転落を回避することを検討中である。
桃花台新交通 桃花台線
小牧〜桃花台東 7.4km
 1991年に開業した、名古屋近郊の住宅地への新交通システムであるが、開業以来利用者は伸び悩み、大幅な赤字が続いている。2003年3月の名鉄小牧線の上飯田連絡線開業の波及効果による乗客増をねらい、全線乗車で350円していた運賃を、250円へと戦略的な値下げを実施、事実利用客は4割増加した。しかし、それでも一日の利用客は3500人にとどまり、その結果2003年度末の累積赤字は61億円までふくらみ、公的資金の支援がなければ2006年度には経営破綻することが明らかになった。
→県と小牧市から受けている公的支援はすでに40億円近くに達しており、県・市・桃花台新交通は2004年末に、市民懇談会を開催。その席上で、運行を続けるためには利用者を7400人に伸ばすか、運賃を590円にするしかないということが明かされた。市民からは様々な意見が出たが、このままでは存続はかなり困難な状況である。
名古屋鉄道 岐阜市内線・揖斐線・美濃町線・田神線<廃止>
岐阜駅前〜忠節 3.7km
忠節〜黒野 12.7km
徹明町〜関 18.8km
田神〜競輪場前 1.4km
 2003年1月に発表した中期経営計画で、「岐阜市内線以北からの2004年度を目途とした撤退に向けて関係自治体と協議」と明記したのち、2004年2月、翌春の廃止を正式決定し、3月に揖斐線の廃止届出と、岐阜市内線と美濃町線(田神線を含む)の廃止許可申請を国に提出。5月、LRV(超低床路面電車)導入など、積極的な路面電車運営をしている岡山電気軌道(岡山市)が支援検討を表明、同社は線路や車両を自治体が所有し、運行を民間委託する「上下分離公設民営方式」の採用と、道路上に色を塗っただけの現在の電停に、段差のある安全島を設置するなどの対策を求めた。これに対し、岐阜市をはじめとする地元自治体は、名鉄と資産譲渡の減額交渉を重ねるなどしたが、財政難の自治体側が重い財政負担に耐えられないことや、電停への安全島設置も難しいことから、同線の存続断念を決断した。ところが今度は仏の大手交通会社・コネックス社(本社パリ市)が、事業進出に名乗りを上げるという新しい動きがでてきた。11月15日に岐阜市に事業計画を提出するべく、最終調整を進めていたところ、国土交通省は11月8日、軌道法に基づき、名鉄が申請していた市内線と美濃町線の廃止を許可した。揖斐線については、鉄道事業法に基づいて廃止届け出書がすでに受理されており、すべて正式に2005年3月末限りでの廃線が決まった。そのため、名鉄からコ社への特許の引き継ぎが不可能となり、コ社が進出するには、煩雑な新規特許の取得が必要となる。
→2005年3月31日限りで廃止された。架線撤去が始まっているという。
神岡鉄道 神岡線 猪谷〜奥飛騨温泉口 19.9km
 2004年10月中旬までに、鉄道部門の年間収入の4分の3を占めていた、神岡鉱業関連の輸送がトラック輸送に切り替わり、実質貨物輸送が停止した。そもそも、国鉄神岡線が第3セクター鉄道として生き残った唯一の理由が、神岡鉱業の硫酸輸送が道路輸送では危険とされたためであった。旅客輸送密度が約100と、有田鉄道亡き後は全国で一番輸送密度が低い鉄道であるため、同鉄道の筆頭株主の三井金属は、第三セクターに移行した際に国から交付された、3億円の鉄道経営対策事業基金が底をつく数年後をめどに、神岡鉄道を廃線にしたい意向を、飛騨市に伝えた。
→12月、名鉄岐阜市内線の継承の意向を持っている仏コネックス社、旅行企画や代理店業務のトラベルプランニングオフィス社などが、運営や経営の参加意志を示したが、交渉は立ち消え状態となった。2005年8月に臨時株主総会を開き、2006年末限りの廃線を決定する見込み。
→株主総会にて、2006年11月末限りでの廃止を決定した。廃止時期を早めたのは、降雪期の前に営業を終え、除雪準備コストを削減するため。
長良川鉄道 越美南線 美濃太田〜北濃 72.1km
 2004年9月、国鉄から第3セクターに転換された際の交付金をもとに積み立てた基金が底をついてしまった。岐阜県と沿線市町村が出資した第二基金もすでに枯渇しており、赤字を完全に穴埋めする手段がなくなってきた。地元では危機感を持っている。
→2005年春、経費削減を目的として、全線で1〜3本程度の列車削減を伴うダイヤ改正を実施。経営コンサルタントによる経営診断が下地になっているとのことで、なんとなく、のと鉄道の悪いパターンを思い起こすのは私だけではないと思うが・・・
樽見鉄道 樽見線 大垣〜樽見 34.5km
 収入の4割を占める、ドル箱の住友大阪セメント岐阜工場(本巣市)のセメント輸送が、2005年度末で打ち切られることになり、存続問題が急浮上している。2002度は過去最悪となる約1億2400万円の経常赤字を計上、その半額を沿線自治体が穴埋めしている。収入の柱であった貨物輸送がなくなって、先行きが案じられる同様のケースとしては、平成筑豊鉄道がある。
→沿線5市町でつくる連絡協議会は、2004年度までであった赤字補填を2007年度まで延長することを決めた。2007年度中に経営状況を確認、経営改善が認められれば支援を継続するということを、3年ごとに繰り返す模様。
→2005年4月、平均17.1%の運賃値上げを実施し、収支改善を目指している。
近畿日本軌道 養老線 桑名〜揖斐 57.5km
 赤字が年間13億余りに達するとして、近鉄は2004年4月、関係自治体に対し、支援策を2006年3月までにまとめるよう要請した。2003年4月に近隣の北勢線を三岐鉄道に経営譲渡し、桑名市など関係自治体が北勢線の支援に乗り出したばかりで、関係自治体は困惑している。近鉄は今のところ廃線は考えていないものの、自社単独による運営はいずれ限界になるとしている。
京阪電気鉄道 大津線(京津線・石山坂本線) 御陵〜浜大津 7.5km
坂本〜石山寺 14.1km
 2003年末、同社社長が大津市を訪問、自助努力の限界として廃線を含めた協議を示唆したというニュースが流れ、大変驚かされた。個人的には、大津の市街地を走る路線だけに、路線末端部を除くと乗客は少なくない印象を受けていたのだが・・・。市側は観光路線等での存続方向性を探っているという。
阪堺電気軌道 阪堺線 大和川〜浜寺駅前 7.3km
 2003年、堺市内部分の廃止や買い取りを同市に打診した。美原町との合併により、政令指定都市となる予定の市が検討している、東西方向のLRT構想との一体化の可能性もあるとされる。
水間鉄道 水間線 貝塚〜水間 5.5km
 2005年4月30日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。負債総額は約140億円で、バブル期に展開した不動産事業のつまづきが主因としている。電車やバスの運行は今後も続ける。
→6月、外食大手のグルメ杵屋が、再建支援に乗り出すことが決まった。外食産業が鉄道業に携わるのは珍しい例といえる。
南海電気鉄道 貴志川線 和歌山〜貴志 14.3km
 2003年、会社側から沿線自治体に、赤字を理由に廃止を検討している旨、申し入れがあったのに続き、2004年8月、会社側は2005年9月いっぱいで同線の事業から撤退することを発表した。理由として、年間5億円以上の赤字が10年以上続いていることや、輸送人員がピークに年間361万人(1974年度)あったのに対して、昨年度は200万人を切るなど、減少傾向に歯止めがかからないことをあげた。
→2004年年末と2005年年始の数日間、列車内に自転車を持ち込める「サイクルトレイン」を実施した。好評であったのは喜ばしいが、近隣にあった野上電鉄の末期と似ていたのが気になっていたが・・
→和歌山市と貴志川町が行った承継事業者の公募に、岡山電気軌道など数社が名乗りを上げ、このほど岡山電気軌道が選定された。岡電は、準備期間が必要で、2006年4月から事業を引き継ぐとしたため、南海は半年、廃止予定日を繰り下げることとなった。岡電は、運営会社「和歌山電鉄株式会社」を設立、路線名は「わかやま電鉄貴志川線」に決まった。
井原鉄道 井原線 清音〜神辺 41.7km
 開業5周年を迎えたばかりであるが、利用者数が計画の約半分しかなく、岡山・広島両県と沿線自治体が積み立てた13億超の経営安定基金が、早期に底をつく恐れが生じている。今年度から岡山県が中心になって、上下分離方式の新たな支援枠組みをスタートさせることになった。様々な合理化策により、2004年度の経常赤字額が、前年度比約4割減の約1億8000万円と大幅に減少する見通しであるなど、やや明るさも見えてきたといわれている。ただ、様々な合理化はほぼ限界に達しており、新しい路線ながら、行く末が案じられる。
→2005年3月、JR線との接続改善などを中心としたダイヤ改正を実施。
阿佐海岸鉄道 阿佐東線 海部〜甲浦 8.5km
 2001年度の営業収支率が445.8と、他の鉄道をダントツ引き離して全国最低の数値をたたく路線である。1992年の開業以来、毎年数千万の赤字を出しつづけており、開業から5年間は、国庫補助もあったが、現在は沿線自治体が補てんしている。開業時に5億超あった経営安定基金は減少しつづけており、2008年度以降は、廃止を含めた検討がなされている。
西日本鉄道 宮地岳線 三苫〜津屋崎 11.9km
 このほど、宮地岳線の三苫以北の事業見直しを沿線3市町に打診した。今後、第3セクター化による経営分離や、地元自治体による赤字の一部負担などが検討される模様。西鉄によると、年間7億に及ぶ宮地岳線の赤字のほとんどが、JRと線路が並行している当該区間によるものだという。
平成筑豊鉄道 伊田線・糸田線・田川線 直方〜田川伊田 16.1km
金田〜田川後藤寺 6.8km
行橋〜田川伊田 26.3km
 1989年の転換時、駅数を倍以上、運行本数も3倍にして、1997年度まで黒字経営を維持し、第三セクター鉄道の中では優良路線であった。しかし、収入の2割弱を占めていた、糸田町にある三井鉱山セメント工場からの貨物輸送が、2004年3月になくなってしまった。これは、三井鉱山セメントの親会社である三井鉱山が産業再生機構による支援を受けたことにより、三井鉱山セメントが解散したためで、地元では鉄道存続の方向で一致しているものの、より一層経営は苦しくなることが予想される。
→経営建て直しのために、トヨタ自動車九州の幹部を非常勤取締役に迎え、トヨタグループの経営ノウハウを吸収することになった。任期は2006年6月まで。
→2005年4月1日から平均5.9%の運賃値上げを実施。
島原鉄道 島原鉄道線 南島原〜加津佐 36.2km
 2004年5月に開かれた島原鉄道自治体連絡協議会において、鉄道総延長78.5kmのうち、赤字幅が増大している南島原以遠について、廃止も視野に検討に入っていることが明らかになった。同社の鉄道部門は年間一億を越える赤字を出しており、そのうちの8割をこの区間が占めているという。
高千穂鉄道 高千穂線 延岡〜高千穂 50.0km
 ここも年間旅客数が92年度の60万人から、2004年度は36万人にまで落ち込み、2004年度決算で累積赤字がさらに増大した。そのため、2005年8月に検討委員会を設置、2006年6月までに鉄道の存廃の結論を出す。2004年度の当期損失は約870万円と少額であるものの、むこう3年間で車両修繕・維持費用などで多額の出費が見込まれることが響いている。
→2005年9月に猛威を振るった台風14号により、鉄橋2カ所の流失をはじめとして、各地で線路が寸断された。復旧には多額の費用がかかるため、9月中にも取締役会を開き、対応を協議する予定であるが、最悪の場合、即廃線の可能性がある。





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