

阪本線から西日本JRバス撤退へ 〜ローカルバス考〜
カンヌ映画祭のカメラドール(新人賞)を受賞した映画にも登場し、鉄道ファンには通称五新線という未成線の路盤上につくられた専用道路を走ることでも有名な、西日本JRバスの阪本線(五條〜城戸)ですが、この夏をめどにJRバスが撤退し、運行主体が沿線の奈良県西吉野村に代わるはこびとなりました。バス専用道路を五條市と西吉野村に譲渡したうえで、運行を奈良交通に業務委託する方向で調整が進められていますが、ここのところ、各地のローカルバスの運行から民間事業者が撤退、地元自治体が運行するバスに移管する例が目立ちます。
これは、平成12年3月に鉄道事業法が改正され、路線の廃止がそれまでの許可制から届け出制に変更されたのに続き、今年2月にバスに関する法律である道路運送法も同様に改正された影響です。最近あらゆる方面で進められている自由化の一端で、新規参入の障壁がなくなったメリットもありますが、逆に、ことローカルバスを抱える地方にとっては、生活路線の存廃問題に直面する厄介なシロモノでもあります。
ただ、民間事業者が撤退しつつある路線は、1日の利用者数が数十人〜数人レベルであるものが多いようで、株主に対しても利益を追求する義務のある一民間事業者に、公共性の高いローカルバス運行の負担を強いること自体に無理があるのも納得できます。そもそもの問題の根底には、ここまで利用客を減らすこととなったモータリゼーションの進展があります。
今年で37歳になる編者は、両親の田舎に行くために、山陰本線のとある小駅から山間部に分け入っていくローカルバスを度々利用していたのですが、子供の頃はいつ乗っても座席は埋まっていて、席に座れないことも度々でありました。まあ両親に言わせると、昭和20年代はそれこそ乗るのに一苦労、ドアも閉まらないほど客が鈴なりになっていたというから、私の子供の頃でも乗客は以前に比べると減っていたということかもしれませんが、今から8年ほど前に久しぶりにこのバスに乗車すると、わずか数人の客を乗せて発車したバスは、その少ない客の半分を市街地で降ろしてしまって、道路整備により以前より見違える程良くなった山間部の道に入る頃には、乗客は私を含めても3人ほどしかおらず、非常にショックを覚えました。
かくいう私も、帰省の際にはクルマを利用することが大半であるがゆえに久しぶりにバスに乗ったわけで、このことについて云々言う資格は全くないのですが、ガラガラのバスに揺られながら、車体の中程にあった乗降口の脇にいた車掌が走行中に切符を売っていた光景や、山間部の街村の狭いT字路の交差点で右折するのが切り返しを伴うほど大変で、たまに民家の軒を擦ってみんな大騒ぎしていたことを、まさに遠い昔のことのように懐かしく思いだしておりました。
モータリゼーションの進展による乗客減というのは、このHPに取り上げられている鉄道の大半に共通する典型的な廃止理由でありますが、鉄道の廃止にバス転換という代替手段があるのに対して、バス廃止はそれこそ逃げ道がありません。交通弱者を守るために、町営・村営バス移管、あるいは乗り合いタクシー導入など、税金を投入さぜるをえない地元自治体の苦悩も深刻で、ローカルバス問題はこれからも各地で様々な問題を引き起こしそうです。