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| 国道から分岐していく築堤跡(B地点) |
三成駅跡を過ぎると、廃線跡の大部分が国道184号線に使われるようになる。
その中で、目立った痕跡を残しているのが木頃本郷駅跡の手前からで、国道から右へ分岐していく築堤が、わずかの長さながら残されている(B地点)。さらに、その先の木門田川にぶちあるところには、橋台が残されており、このあたりは尾鉄の足跡を見ることができる貴重なポイントである。
石畦駅のあったあたりから、再び廃線跡は国道に吸収されてしまうが、その国道184号線はかなり急勾配であるため、再びこの道は本当に鉄道跡なのかと疑いたくなってくる。
しかしこれは、最急勾配1000分の50という、鉄道としてはかなりとんでもない部類に入る勾配や、スイッチバックを含む山岳区間であった名残なのである。
もし設立当初の計画のように、蒸機牽引の列車であれば、この急勾配に太刀打ちすることは、かなり困難だったのではないかと思わせる。
この山岳区間に合計8本を数えたトンネルは、尾道方から1号、2号と名が付されていた。しかし、廃線跡が国道化された今、3、5、6号トンネルはこの国道によって開削→切通し化され、影も形もない。
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唯一、現役当時の姿で残されている 4号トンネル跡(C地点) |
一方、国道トンネルとして現存している残りの5本のトンネルも、1、7、8号トンネルについては、2車線幅の道路トンネルとして断面拡張がなされているし、2号トンネルも断面の幅こそ鉄道トンネル当時とそう変わらないものの、国道の歩道部分として使われているために、コンクリートが巻かれて完全改築が施されている。いずれにしろ、これらのトンネルの尾鉄時代の名残はないに等しい。
ところが、C地点にある4号トンネルだけは、山を急カーブで回り込んでいたトンネル付近の線形が嫌われたのであろう、国道のルートをぎりぎりはずれ、赤煉瓦積みの風格のある曲線トンネルが、完全なる形で残っている。尾道口の横には、説明文が書かれた看板も立っており、沿線で随一の貴重な尾鉄の遺構となっている。
畑駅のあったあたりがサミットである。ここからようやく下りにかかり、尾鉄の7、8号トンネルであった2本の国道トンネルを抜けると、国道は大きな橋梁で谷を渡りながら右方へとカーブしていく。
この橋梁の手前(D地点)から、左方に向かって谷を下りていく細い地道が分岐しているが、この道こそが諸原のスイッチバックに向かっていた尾鉄の線路敷跡である。
少ないながらも民家がある諸原の集落からは少し離れ、駅というよりは山中でスイッチバックするための信号場のような役割であったと思われる諸原駅の跡地から、市の方向へも明らかな線路跡の道が延びている。
この道は、国道の高架橋の下でルートがオリジナルから少し改ざんされているものの、鉄道跡の雰囲気を強く残しながら、先ほど分かれた国道に合流してゆく。
御調(みつぎ)町の中心である市の集落の手前にあった終点・市の駅跡は、中国バスの出張所となっている。駅前通りであった道と駅前広場跡に、のどかであったであろう終着駅の雰囲気を残している。
鉄道現役当時の地図を見ると、尾鉄が田園地帯や山岳地帯の中を、のんびりと(尾道〜市間17.1kmに約50分を要していた)走っていた様子をうかがい知ることができるが、三成までだったら、新幹線の連絡鉄道としても、生活の足としても、立派に鉄道はやって行けたのではないかという錯覚を起こさせるほど、尾道方は市街地化が進んだ。
そして、三成以北の山岳地帯も、そのほとんどの線路敷が国道184号線に転用されたため、全体的に鉄道の痕跡はあまり残っていないというのが実状であるが、各地に散在する数少ない痕跡や、線路跡の国道の急勾配が、かえってこの地に尾道鉄道が走っていたことを強く印象づけている。
もし当初の計画通り、尾鉄が尾道と三次を結ぶことができていたならば、福塩線は福山〜府中間の旧両備鉄道区間の運行にとどまるなどして、この付近の鉄道地図は現在とは大いに変わっていたであろう。
この福塩線が三次(正確には芸備線塩町)〜上下と福山とを結んだというのはかなり興味深い事実である。というのは視点を変えて現在の道路を見てみても、尾道〜三次間は国道184号線が通じ、さらには高速道路まで敷設されようかという勢いであるのに対して、三次〜上下〜府中〜福山という道は一本化されていないばかりか、その大部分が国道にも昇格していないほどの、いわば本来の交通の大きな流れには則していない経路なのである。実際福塩線に福山方から乗車しても、府中を過ぎ、下川辺、中畑、河佐といった府中市内の駅までで、乗客の大半が降りてしまう印象がある。いくら福山がこの付近の中核都市といえども、福塩線のルートは少し変わった辿り方をしているのである。
尾道側の文献には、これには深い理由があるように匂わせるフシが記されている。さらなる興味がそそられる。
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