■沿革

金名線の終点、白山下駅よりさらに先にあった発電所工事線について調べてみました。
金名線については本ホームページのメインに詳しく出ていますので、そちらを参照して下さい。

地図
尾口発電所工事線 黒線

明治末期から大正、昭和初期にかけて、この白山麓にも水力による電源開発が盛んにおこなわれ金名線の終点白山下駅には、工事資材が盛んに搬入されセメントの倉庫も建っていました。
そんな頃、手取川支流の尾添川には、中宮発電所と尾口発電所が昭和10年頃建設された。
この工事線は、当時の小松の電灯販売会社が設立した雄谷川電力の中宮発電所と、矢作水力の尾口発電所建設のために敷設された工事専用線です。発電所建設時期から考えると昭和7、8年頃の敷設だと思います。
雄谷川電力の中宮発電所は尾添川のさらに支流の雄谷川から取水し尾添川との合流点に発電所が有り、昭和10年10月に完成し当初は小松方面に送電していた。尾口発電所は尾添川の左岸、尾口村にあり中宮地区の対岸の国道360号線直下にあります。
現在はどちらの発電所も北陸電力が運転管理しています。

現在の中宮発電所
現在の中宮発電所 
 
現在の尾口発電所
現在の尾口発電所 

白山麓を走った鉄道  ─金名線─  鳥越村編 によると、
「昭和10年矢作水力尾口発電所の工事が始まると、金名線で初めて本格的な貨物列車が運行されるようになった。白山下駅では、専用貨物置場が駅東部に設けられた、そこより専用軌道が発電所工事現場まで開設され、資材の輸送に当たった。専用軌道は同駅より300m北部に下り、専用橋で吉野谷村へ渡り尾添川右岸沿いに中宮地区まで敷設された。中宮集落への旧道の分岐点近くの対岸に急坂を登るためスイッチバックが一ヶ所設けられた。」
との記述がある。

現在の白山下駅は駅舎のみバス停として残り線路跡は自転車道としての整備工事中です。
平成14年度中には舗装工事もおわり快適なサイクリングコースとして供用されるでしょう。

旧白山下駅
現在自転車道として整備中の旧白山下駅ホーム側より鶴来方向を望む 




■探訪

白山下駅は手取川の左岸にありますが、中宮発電所は手取川右岸支流尾添川の中ほど右岸にあり、資材を運ぶには尾添川右岸沿いに線路を敷設し、手取川を渡河すれば大橋梁は一つで済みます。
そこで手取川をどこで渡河していたのか先の文献より調べたところ白山下駅より約300m戻ったところに蔦に覆われた専用橋台跡がありました、手取峡谷の深い谷を一径間で渡っていたようです。写真参照。

左岸橋台跡
左岸橋台跡 
 
左岸より右岸橋台跡
左岸より右岸橋台跡を見る 

橋台は金名線の本線よりわずかしか離れていないのに90°向きが変わっており、橋台に向かうには一旦、白山下駅の構内引き込み線に入り進行方向を換え大きく迂回右カーブして本線と平面交差して渡河地点に向かっていたものと思われる。
左岸側は耕地整理がなされ路体築堤はわかりませんでした。
地元の人の話では、この橋台跡を利用して自転車道の橋を架ける計画もあったようです。なにぶん古い橋台ですので使えるのかわかりません。
右岸側に渡ると吉野谷村です。橋台までの路体築堤がわずかですけど残っています、松の木が植えられその先は木滑地区の新しい墓地になっています。
そこから先は、右カーブして現在の国道157号線付近を走って国道沿いにあるレストラン[手取川]の裏を抜け高倉山山腹をぬうように進み木滑新地区の上に出ます。ここまではかなりの急勾配です。

木滑新地区の上を走る線路跡
木滑新地区の上を走る線路跡、中宮方向を見る 

木滑新地区を抜けると尾添川右岸の深い谷をさかのぼります、現在は林道になっており林道入り口に鎖が掛けてあり車では通行できません。徒歩にて確認したところ小さな谷川を超える各橋は上路式トラス橋の橋台があり、今は橋台を利用してコンクリート橋が架けてありました。奥の畑に行くのに地元の車が通る程度です。

尾添川右岸をさかのぼります
尾添川右岸をさかのぼります、中宮方向 

中宮地区手前、採石工場の対岸にスイッチバック跡があります、国道360号線からなんとか確認できましたが、夏草が生い茂ると確認困難になるでしょう。

橋梁跡の橋脚 中宮地区
谷を渡る橋梁跡の橋脚 中宮地区 

スイッチバックを抜けた中宮温泉スキー場下の谷に当時の橋梁跡がありました、橋台一対と橋脚一基があり手取川渡河橋に次ぐ規模の橋梁跡です。
工事線は中宮地区の下を通り尾口発電所の対岸の川岸まで敷設されていました。
尾口発電所の対岸は杉林になっており斜面に線路跡の小段と切通しが確認できます。
そこから尾口発電所へは尾添川を渡って資材が運ばれ、中宮発電所へはそこから馬車へ積み替えられ資材が運ばれていました。
金名線の創設者小堀定信らの名古屋までの計画によると、尾添川左岸沿いにさかのぼり、ほぼ今の国道360号線白山スーパー林道のコースで白川に至り南下して越美南線(長良川鉄道)に接続の予定でした。だからこの工事線を利用する計画は無かったようです。

参考文献  石川県鳥越村史別巻 白山麓を走った鉄道  ─金名線─  鳥越村編
        吉野谷村小百科事典 
        角川地名大辞典 石川県