■ガイド 美濃福岡〜下付知間

 この区間は付知川を一回渡った後は、美しい付知川の渓谷に沿うように、その右岸を延々と川の蛇行にあわせて遡っていく。ただし、付知川の蛇行が緩やかなため、渓谷を行く鉄道には珍しく、トンネルは一つもない。

 美濃福岡駅のすぐ先で、線路は国道257号線と立体交差していた。ここでも国道には今なお福岡跨道橋が架かっているが、またもや下を通っていた廃線跡のほうが埋められて、意味のない橋になっている(F地点)。

 そして、ここから付知川の方へ段丘を下りていた廃線跡はすでに自然に還ってしまっているうえに、付知川の手前付近から栗本駅跡付近まではオートキャンプ場や文化センター、そしてそれらに付随する遊歩道に整備されている。しかし、付知川を渡る斜張橋「ローマン橋」(G地点)は橋台に鉄道時代のものを利用し、これをかさ上げして橋を架けているし、栗本付近の遊歩道の橋も北恵那のものを再利用している。

線路跡
付知川右岸を進む廃線跡。枕木が見える  

 ホーム跡らしきものがある栗本駅跡の手前にて整備は終わり、廃線跡はここから美濃下野駅跡の2kmほど先(I地点)まで、付知川の右岸すれすれをいくハイライトにかかる。

 この区間は現役時代は付知川の清流を間近に望む風光明媚な区間であったのだが、廃線となった現在では、美濃下野駅跡手前の小屋のあるところから駅跡までの数百メートルが軽自動車が通る砂利道(というより枕木道?)になっているのを除いては、ほとんどが薮こぎ状態となる。そして苦労して進んでも鉄橋があり、長くはないものの枕木が腐っていて下手に渡ると踏み抜く危険性があり、実はあまりお薦めできないのである。

 そのため慎重派の方は、廃線跡の対岸の道を進むとよい。その対岸の道からも付知川を渡る橋が架かっていて、容易に行くことができる美濃下野の駅跡には、相対式ホームが眠っている。そして、駅跡のすぐ中津町方には、付知川の支流をまたいでいた少々立派な鉄橋も残っている(H地点)。

 やがて、国道が右から寄り添うようになる(I地点)と、ここから下付知までの廃線跡は一部国道の拡幅によって消滅するものの、国道の山側を進んでいく。橋梁跡や美しい築堤、あるいは信号機の土台跡等を散見しながら田瀬の駅跡に着く。

 ここには緩やかにカーブする長いホームが残っている。広かった構内は一部駅裏の道路に浸食されているが、今でも雰囲気を充分残している。

 そして、この付近から次の稲荷橋駅跡を過ぎたあたりまでの廃線跡は、雑草がきれいに刈ってあり、緑の絨毯の上を行くようで、見た目にも美しいし、歩くのにも気持ちがよい。

 稲荷橋の駅跡は、まさに稲荷神社という小さなお社の隣にホームがあり、待合室までそのまま時の流れに取り残されたように佇んでいる。そして、付知の長い集落の入り口にあった終点下付知では、駅舎が廃屋同然で残っていた。ただ、荒廃が進み、誠に残念ながら平成14年の年初に解体され、今はない。

稲荷橋駅跡
草の絨毯となった路盤の脇にひっそりと横たわる  
稲荷橋駅跡。待合小屋までそのまま残されている  
下付知駅跡
下付知駅跡。廃屋同然の駅舎の手前には架線柱や 
プラットホームも埋もれていた(平成9年撮影) 

 駅舎が残っていたときには、待合室の中には昼間のバス代行により、1日わずか6往復にまで減った最後の時刻表がかかったままであった。また、駅舎の外に目を転じても、貨物上屋や架線柱が、それも1本だけ残っていたりしていた(この鉄道は中津町や下付知の駅構内は、まるでチンチン電車の架線のように、ワイヤーによって架線を引っ張っていたので、架線柱が1本だけ残ることがあるようだ)。

 また駅裏の森林鉄道のターミナルがあった場所は今でも材木が山積みされており、鉄道に代わってトラックでその積み出しがなされている。



■北恵那鉄道あとがき

 栗本から田瀬の南方までの、付知川右岸を行く廃線跡が、遊歩道として整備されたなら、すばらしいのになあと思う。といっても栗本駅の中津町方のような、お金をかけた整備をする必要はまったくない。橋梁跡こそそのままでは心許ないので、最小限の整備をする必要はあるだろうが、あとは基本的に下草刈りをするだけで充分なのである。もっとも、枕木から飛び出ている犬釘も処理しておかねばならぬかもしれないが。

 これはハイキングをしたりアウトドアで遊ぶ人々だけでなく、付知川で鮎釣りをする人々にも喜ばれるであろう。荒廃した廃線跡が何十年も放置されているのは忍びないということもあるが、逆の見方をすると、土地の再利用などがなされていない分、ちょっとした整備をするだけで、すぐにでも一本の道として復活できるのである。

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