北陸本線は木ノ本駅から柳ケ瀬トンネル経由の敦賀駅までと敦賀駅から旧杉津駅経由の南今庄駅間に大規模な廃線跡が残っているが,南今庄駅〜今庄駅と今庄駅〜湯尾駅間にも小規模ながら廃線跡がある.

 そのうち南今庄駅と今庄駅の間は,現在線がトンネルによって比較的スムーズに結ばれているのに対し,旧線はその山麓を北へ少しだけ迂回するように通っているのみで,廃線跡の道路も大桐駅から現南今庄駅を経て一本道であり比較的妙味に欠けると思われる.

 しかし今庄駅と湯尾駅の間は日野川が大きく蛇行しており,現在線が湯尾峠を比較的まっすぐに750m位のトンネルでくぐるのに対し旧線は新線より約200m位東の尾根がややくびれて低くなっている所を400m位のトンネルで結ばれていた.線路がやや曲がって遠回りでも,トンネルを掘る距離をなるべく短くした訳である.

 地形図「今庄」(1/25000)を見ると旧線のトンネルは中が曲がっていて,前後の廃線跡も道路としてかなりの部分残っているように見える.以前,上記の旧北陸本線の柳ケ瀬経由の部分や杉津駅経由の部分を歩いた頃からずっと機会があれば訪れてみたいと思っていた.今庄駅と湯尾駅は現在3.7kmであり旧線も少し長いだけである.従って1時間に1本程度ある電車を1本遅らせただけで一駅間の廃線歩きが出来ると思われた.

 実は現在線の車窓から南側の旧線のトンネルの開口部が窺えそうな位置関係と思われるが間に砂利工場があって車窓から目を凝らしても1度も旧線のトンネルは見えなかったのである.

 01年暮れに京福電鉄の南越線の廃線を訪れた際にやっとこの部分を歩くことが出来た.行程は湯尾駅から始め,南下するコースをとった.

 地形図では湯尾駅から1km位南が新線と旧線の分岐点とわかる.しかし線路と並行する道は無さそうであった.しかし実際は湯尾谷の川筋より250m位北でまさしく廃線跡の道に出た.この道は電車の車窓から何度も眺めた道である.

 廃線歩きを始める.道は自然に新線から分かれやや左にカーブしている.すぐに湯尾谷に架かる橋に着いた.橋の下を見るとレンガ造りの橋台がちゃんと残っていてそのまま道路の橋台として転用されていた.橋台は幅も広く,さすが北陸本線である.その日はローカル私鉄の廃線を訪ねたので軌道の幅が全然違う事が良く分かった.以前の旧北陸本線を訪れたときが思い出された.旧線の杉津からの軌道の続きであるので当然ではあるが立派なものである.

 進むと暗渠と側溝がありそれらは造りが立派で当時のままのようであった.枕木も何本か残っていて雰囲気はかなり良い.里道と斜めにクロスする場所に出た.その付近は軌道跡は盛り土されていて里道に都合のいいようになっていた.その先はいよいよトンネルである.里道とクロスする付近やトンネルの手前は軌道跡はかなり広くなっていて保線用の側線があったかもしれない.トンネル手前は地形図でも分かるように切り通しになっていたが,その幅はやはりかなり広いものであった.この点でも旧本線の軌道は立派に作られたことが良く理解できる.トンネルの開口部は石積みで,葉原トンネルや山中トンネルと同様の単線の仕様ではあるが間口も広く大変立派で文化財として貴重である.トンネル入口に待ち時間3分の信号があり,また「通学路につき注意」という看板があった.実はトンネルはかなり長く,かつ曲がっているので普通は廃線歩きに懐中電灯が必要なのだが,ここはちゃんと蛍光灯の照明が,しかもかなり明るく,設置されていた.付近は人家もかなり多く廃線跡の道路は生活道路なのであった.

 トンネル内部はレンガ積みで,これもまた立派なもので明治時代の国家の威信を感じるとともに今も毎日生活道路として通行している人たちがうらやましくなった.トンネル内の舗装もきれいにされていたが,ただ他の同様なトンネルと同じく水が天井から落ちてくるのは致し方ないことである.歩いていても間口が広いので,たとえ車が来ても危険はさほど感じないと思ったが幸い車には出会わなかった.

 楽しいトンネル歩きをして南側の開口部に着いた.北側と同様の石積みであり,地形の関係で西側の崖にも軌道の保護のため石積みの壁が作られていた.それらは趣があったが残念ながらトンネルを出たとたん砂利工場の喧噪に出会い,ややがっかりとした.

 道はしばらく行くと廃線跡の東側を走るようになり西側に小さな橋台が残っていた.それから先の軌道跡は破壊されて分からなかった.道はまもなくR365に合流しており南に進むと踏切がある.その付近からやや北側が旧線の分岐点と思われた.踏切の所には今庄宿を示す常夜燈が作られていて,宿場の解説が為されていた.今庄は旧北陸道の重要な宿場町であり,福井を朝立てばここに宿をとる段取りになっていたそうである.なぜならあくる日は険しい峠越えが控えているからである.

 宿場は駅の西側にあって今も古い町並みが良く残っており,”うだつ”の上がった旧家もあって雰囲気が良い.今庄駅の中に観光案内所があり宿場町の地図パネルや解説パンフレットがある.他に北陸トンネルが出来たときやSL時代の写真,古い切符,行先案内板等の鉄道関係の資料もあって小さなスペースながら楽しめた.

 湯尾駅で降りた電車の1時間後の電車に十分間にあった.短い時間ではあったが楽しい旅が楽しめた.